「松前さん、うちの業界はちょっと特殊なんでね」
この言葉、僕は今まで何百回聞いたか分かりません。
工務店でも、士業でも、製造業でも、飲食でも、美容でも聞きます。
そして正直に言うと、この言葉が出た会社は、だいたい数年後に苦しくなっています。
これ、業界のせいではないんですよ。
今日は、なぜそうなるのかという話をします。
少し耳が痛い話かもしれませんが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
この記事の要点を、先にまとめます。
- 「うちの業界は特殊だから」は、学ばなくていい理由として使われている事がほとんどです。
- この言葉は社長で止まらず、幹部、現場、新人、取引先の順に広がります。
- 特殊なのは作業であって、お客様の不安の構造は業界が違ってもほぼ同じです。
- 持ち込むべきなのは施策ではなく、その施策が解いていた不安のほうです。
- 社内で通す時は説得せず、期間と判断する数字を先に決めて、小さく試してください。
では、順番に説明していきます。
売上が落ちる原因は、その言葉が学ばない理由に使われているから
なぜなら、その言葉が「学ばなくていい理由」として使われているからです。
本当に業界を分析した上で「ここが違う」と言っているなら、それは戦略です。
問題は、そうではない場合です。
新しいやり方の話を聞いた瞬間に「うちは特殊だから」と言って終わらせる。
検討もしない。
試しもしない。
この一言で、思考が止まってしまうのが本当の問題です。
ここで、はっきりさせておきたい事があります。
この言葉は、嘘をついているわけではありません。
本人は、心からそう思っています。
だからこそ、厄介なんですよねぇ。
自覚がないので、誰にも指摘されません。
そして、指摘されても「分かっていないな」で終わってしまいます。
もう1つ、この言葉には特徴があります。
使うほど、使う回数が増えていく事です。
1回言って場が収まると、次も同じ言葉が出ます。
検討しなくて済むので、頭も使いません。
気づいた時には、新しい話が入ってこない会社になっています。
「うちは特殊」は社長で止まらず、取引先まで5段階で広がる
いちばん怖いのは、この言葉が社長で止まらない事です。
社長が言うと、社員も言い始めます。
広がり方には、はっきりした順番があります。
- 社長が、外の提案に対して「うちは特殊だから」と言う。
- 幹部が、社長の判断を説明する時に同じ言葉を使う。
- 現場の社員が、改善提案を却下する時に使うようになる。
- 新人が、入社半年でこの言葉を覚える。
- 取引先や外部の業者も、この会社にはそう言えばいいと学習する。
5番まで来ると、外から新しい情報が1つも入ってこなくなります。
提案しても却下されると分かっている相手に、誰も何も持ってきません。
僕は、この状態の会社を何社か見ています。
共通しているのは、社長が「最近、誰も新しい提案をしてこない」と感じているという点です。
でも、原因は社員のやる気ではありません。
提案が通らない事を、社員が正しく学習した結果です。
そして、この状態は売上に直結します。
情報が入らない会社は、市場の変化に気づくのが遅れます。
5年もあれば、静かに置いていかれます。
特殊なのは業界の作業であって、お客様の心の動きではない
特殊性は、もちろん存在します。
ただ、特殊なのは業界の作業であって、客の心の動きではありません。
ここが、いちばん誤解されているところなんですよねぇ。
例えば、屋根の葺き替えと歯科矯正では、やる作業はまったく違います。
資格も、道具も、法律も違う。
ここは確かに特殊です。
でも、お客様の側から見るとどうでしょうか。
高い買い物で不安。
失敗したくない。
相場が分からない。
誰に頼めばいいのか分からない。
この不安の構造は、業界が違っても驚くほど同じです。
そして、Web集客で成果が変わるのは、作業の側ではなく、この不安を解く側です。
だから、他業界の成功事例が普通に効きます。
特殊だから真似できない、のではありません。
真似する場所を間違えているだけです。
真似すべきなのは施策ではなく、お客様の不安をどう解いたかという部分です。
もう1つ、判断の基準をお伝えします。
自社の特殊性が本物かどうかは、次の質問で分かります。
「その特殊性は、法律や資格で決まっていますか。それとも、業界の慣習ですか」
法律や資格なら、それは本物の制約です。
慣習なら、それは変えられる制約です。
そして、苦しくなっている会社が挙げる特殊性の大半は、慣習のほうです。
他業界を持ち込むと、競合が誰もいない状態でスタートできる
いちばん大きいのは、競合が誰もやっていない状態でスタートできる事です。
同じ業界の中だけを見ていると、みんな同じ事をやります。
同じような会社案内、同じような施工事例、同じような料金表。
その中で差を付けようとするから、最後は値下げ競争になるんですよねぇ。
ところが、隣の業界では当たり前になっている手法が、自分の業界にはまだ来ていない事が結構あります。
そこに先に手を付けた会社は、しばらく独走できます。
そして、もう1つ大きな効果があります。
社内の言葉が変わる事です。
同業だけを見ていると、社内の会話が業界用語だけになります。
その状態で書いた文章は、お客様に1つも伝わりません。
業界の中で正しい言葉と、探してもらえる言葉は、別物だからです。
他業界を見ると、この差に気づけます。
自分が客の立場になった時、専門用語を並べられて困った経験を思い出すからです。
外から自社を見る目が育つと、書ける文章が根本から変わります。
業種を問わずそのまま持ち込める6つの型
抽象的な話ばかりでは動けないので、具体的に挙げます。
次の6つは、業種を問わずそのまま持ち込めます。
- 施工前や施術前の不安を、動画やアニメで先に解消する見せ方。
- 料金の考え方を公開して、問い合わせ前に納得してもらう構成。
- 担当者の顔と人柄を先に出して、会う前に信頼を作る導線。
- 過去のお客様に、感想を文章でもらう仕組み。
- 当日から完了までの流れを、1枚にまとめた資料。
- できない事、対応できない範囲を、先に明記する項目。
どれも特別な技術はいりません。
やらない理由の9割は、業界の慣習ではなく、単に前例がないという心理的な抵抗です。
特に効くのが6番です。
できない事を書いてある会社は、ほとんどありません。
だから、書いた瞬間に信用されます。
そして、持ち込む時のコツもお伝えします。
丸ごと真似しないでください。
他業界の施策をそのまま持ってくると、たいてい浮きます。
持ち込むのは、その施策が解いていた不安のほうです。
不安を持ち込んで、解き方は自分の業界の言葉で作り直す。
この順番なら、失敗しません。
業界の規制は、伝え方の制約であって中身の制約ではない
確かに、業界には守るべきルールがあります。
広告の表現規制が厳しい業種もありますし、資格に関わる部分は慎重にやるべきです。
そこを無視して他業界の真似をすれば、事故が起きます。
しかし、規制があるのは表現の一部であって、考え方そのものではありません。
規制は、伝え方の制約であって、伝える中身の制約ではないんです。
例えば、効果を断言できない業種は多いです。
でも、お客様の不安を先回りして書く事は禁止されていません。
どんな流れで進むのか、どこまでが料金に含まれるのか、担当は誰なのか。
この情報を丁寧に出すだけで、規制の範囲内で差が付きます。
それに、規制が厳しい業種ほど、みんな似たような当たり障りのない表現になっています。
全員が同じ事を書いている市場ほど、まともに情報を出した会社が目立ちます。
とはいえ、判断に迷う場面はあります。
その時の基準を1つお伝えします。
結果を約束する表現は避け、過程を説明する表現に変えてください。
「必ず〇〇になります」ではなく「〇〇の流れで進めます」。
これだけで、通せる表現の幅がかなり広がります。
判断がつかない表現は、必ず専門家に確認してください。
制約は、言い訳にもなるし、武器にもなります。
どちらに使うかは、社長が決める事です。
訪問看護の見せ方を金属加工に持ち込んだ実例
例えば、金属加工の会社さんの話です。
初めてお会いした時、事業主様にこう言われました。
「松前さん、うちは図面をもらって削る仕事なんでね。ホームページで何かが変わる業界じゃないんですよ」
確かに、取引は会社対会社ですし、相手も限られています。
特殊だという言い分は、分かります。
ただ、その少し前に、僕は訪問看護の会社さんのサイトを作っていました。
そこでやったのが、初めて利用する人が怖がる場面を、アニメーションで先に全部見せるという構成です。
何が起きるか分からない状態が、いちばん不安を大きくするからです。
これ、金属加工でも同じじゃないかと思ったんですよねぇ。
発注する側は、図面を渡したあと、どこで何が起きているのか見えていません。
そこで、加工の工程を写真と短い動画で順番に並べたページを作りました。
材料が届いてから、検査して出荷するまでを、そのまま見せただけです。
半年後、事業主様からこう言われました。
「新規のお客様から、いきなり見積り依頼が来るようになった」
それまでは、まず工場見学から始まっていたそうです。
見学の代わりを、ページが先にやってくれたという事です。
そして、想定外の効果もありました。
社内の若手が、自分の工程を撮影して説明するようになったそうです。
今まで、自分の仕事を人に説明する機会が1度もなかったからです。
訪問看護と金属加工。
業界はまったく違いますが、初めて頼む人の不安は同じでした。
他業界を学ぶ方法は、自分が客として体験した会社の観察だけ
いちばん簡単なのは、自分が客として体験した会社を観察する事です。
新しく本を買う必要はありません。
セミナーに行く必要もありません。
社長も、会社を出れば1人のお客様です。
病院に行く。
車を修理に出す。
家族が習い事を始める。
その時に「うまいな」と感じたら、その場でスマホにメモしてください。
メモする内容は、3つだけで十分です。
- どのタイミングで安心したか。
- その時、何を見せられたか。
- 自社に置き換えると、どの場面に当たるか。
そして、月に1つでいいので、自社に持ち込んでみる。
これを1年続けると12個の改善が入ります。
同業他社は、この12個を1つもやっていません。
もう1つ、効率の良い学び方があります。
自社と金額と頻度が近い業種を、1つだけ決めて追いかける事です。
数十万円の買い物で、人生に何度もない。
この条件が近ければ、業種が違っても不安の構造はほぼ同じです。
住宅リフォーム、結婚式、車の購入、歯科の自費治療。このあたりは相互に学び合えます。
社内で通す時は、説得せずに小さく試して数字を見せる
ここからが本題です。
社長が1人で学んでも、社内が動かなければ何も変わりません。
そして、社内でいちばん出てくる反対意見が、こうです。
「うちの業界では、そんな事をやっている会社はありません」
これ、事実としては正しい指摘なんですよねぇ。
だから、正面から反論しても勝てません。
僕が見てきた中で、いちばんうまく通っているやり方は、こうです。
- 全部を変えるのではなく、1つのページ、1つの工程だけで試すと宣言する。
- 期間を決める。3ヶ月で判断すると先に言う。
- 判断する数字を先に決める。問い合わせ件数、質問の回数、など。
- 反対した人に、その数字の集計を任せる。
4番が効きます。
反対していた人が数字を集めると、途中で結果に興味を持ち始めます。
そして、いちばんやってはいけない事もお伝えします。
他社の成功事例を見せて説得する事です。
「よそはよそ、うちはうち」で終わります。
説得しないでください。小さく試して、数字を見せてください。
議論では人は動きませんが、自社の数字が出ると動きます。
施策の評価は、件数より問い合わせの中身と商談時間で見る
3ヶ月試したとします。
ここで評価を間違えると、次が続きません。
見る数字は、次の3つです。
- 問い合わせの件数。
- 問い合わせの中身。何を聞かれなくなったか。
- 商談にかかった時間。
特に2番と3番を見てください。
件数はすぐには増えません。
検索に反映されるまで、通常1ヶ月から3ヶ月かかるからです。
件数だけで判断すると、効いている施策を途中でやめてしまいます。
一方で、2番と3番は早く動きます。
金属加工の会社さんの例で言えば、工場見学から始まっていた商談が、いきなり見積り依頼に変わりました。
これは、件数が増える前に現れる変化です。
もう1つ、評価の時に決めておく事があります。
続ける条件と、やめる条件を先に紙に書いておく事です。
3ヶ月で問い合わせの内容が1つも変わらなければ、やり方を変える。
質問が減っていれば、対象を広げて続ける。
この線を先に引いておくと、感情で判断しなくて済みます。
学んだ事を最短で形にするには、自社でページを直せる状態が要る
ここで、いちばん現実的な壁の話をします。
スピードです。
学んだ事をホームページに反映しようとして、制作会社に頼むと2週間待ち。
その間に熱が冷めて、結局やらない。
これ、本当によくある光景なんですよねぇ。
しかも、他業界から持ち込む施策は、1回で当たりません。
やってみて、反応を見て、言葉を変える。
この繰り返しが必要なのに、1回2週間かかると年に数回しか試せません。
自社でページを直せるようになると、思いついた日に反映できます。
具体的に、何ができるようになると変わるのか。
次の4つで十分です。
- 見出しと本文を、自分で書き換えられる。
- 写真を差し替えられる。
- よくあるご質問を1問だけ追加できる。
- 新しいサービスのページを1枚追加できる。
この4つができれば、他業界から持ち込んだ施策を、その週のうちに試せます。
今はAI × WordPress × テーマSnowMonkeyを使えば、専門知識がなくても文章と構成を自分で組めます。
学ぶ速さより、試す速さのほうが結果を変えます。
よくあるご質問
他業界の事例は、どこで探せばいいですか?
わざわざ探さなくて大丈夫です。
自分や家族が客として使ったサービスが、いちばん質の高い教材になります。
実際に感情が動いた体験だけが、再現できる学びになります。
どうしても探したい時は、自分の業界と客層が近い別業種を見てください。
社員が特殊だからと言って動かない時は、どうすればいいですか?
まず、社長が使うのをやめてください。
社員のその言葉は、たいてい社長から移っています。
そのうえで、1つだけ小さく試して結果を見せるのが早いです。
議論で人は動きませんが、数字が出ると動きます。
他業界の真似をして、クレームになる事はありませんか?
表現の規制がある業種は、事前に確認してください。
医療、金融、不動産、人材などは特に注意が必要です。
判断に迷う表現は、必ず専門家に確認してください。
ただし、流れを説明する、担当者の顔を出す、費用の考え方を書く、といった部分でクレームになる事はほぼありません。
取引先から、業界の常識を守れと言われた時はどうしますか?
その常識が、法律なのか慣習なのかを確認してください。
法律なら守る。慣習なら、誰が困るのかを具体的に聞いてください。
困る人が明確に出てこない慣習は、たいてい理由が失われています。
それでも関係を優先すべき相手なら、その取引先から見えない部分で試してください。
3ヶ月やって何も変わらなかった時は、どうすればいいですか?
やめる前に、1つだけ確認してください。
持ち込んだのが施策そのものだったのか、不安の解き方だったのか、という点です。
施策を丸ごと真似していた場合は、不安の側から作り直すと動く事があります。
それでも変わらなければ、次の1つに移ってください。12個試せば、必ず当たります。
特殊なのは業界ではなく、そう思い込んだ状態です
もう一度お伝えします。
「うちの業界は特殊だから」という言葉自体が悪いのではありません。
その言葉で、検討そのものを終わらせてしまう事が問題です。
そして、この言葉は社長で止まりません。
幹部、現場、新人、取引先へと順番に広がります。
5番目まで来ると、外から新しい情報が1つも入らなくなります。
業界によって違うのは作業です。
お客様が何に不安を感じ、どこで安心して財布を開くかは、驚くほど共通しています。
だから、他業界のやり方は普通に効きます。
持ち込む時のコツは1つだけです。
施策を丸ごと真似せず、その施策が解いていた不安のほうを持ち込んでください。
社内で通す時も、説得しないでください。
1つだけ小さく試して、期間と数字を先に決めて、反対した人に集計を任せる。
これがいちばん早いです。
そして、学んだ事を試せる速さが、そのまま差になります。
月に1つ、他業界から持ち込む。それを1年続けるだけです。
ぜひ、次に客としてどこかを利用した時、良かった点を1つメモしてみてください。
それが、来月の自社の改善案になります。
そして、もし「気づいた事をすぐ自社サイトに反映したい」と感じたなら、Webのスキルを社内に持つ事を考えてみてください。
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